生きづらそうなふたりのトークショーに『普通のひと』の残酷さを見た

村田沙耶香さん、芥川賞受賞おめでとうございます。

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そんな村田さんの芥川賞受賞が決定した週の土曜日。
下北沢B&B で、村田さんのトークショーがあったので、行ってきました。

 


…とは言っても、村田さんの著作絡みでのトークショーではなく、米代恭さんという漫画家さんのコミックス発売記念としてのもの。

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『この漫画、ぜんっぜん知らないしな〜…。しかもスピリッツってことは男性向け漫画だろうしな〜…』なんて思いながら、完全に村田さん目当てで行ったんですけど…

漫画おもしろかったです(テヘペロ⭐︎

 

 

まぁ、漫画を買わせるくらいに興味深いトークショーだったんですよ。
元々、編集者さんを介して知り合ったという村田さんと米代さん。一緒にご飯とかもちょくちょく行っているほどの親交具合らしく、トークショーが進むほどに、それに納得をしました。
それくらい、ふたりの発する『生きづらそうな』雰囲気は似ていました。
そんなトークショーの内容をまとめたいと思います。よっしゃ!

 

 

『あげくの果てのカノンは不倫SFです』

トークショーは乾杯からスタート。
これは先述の通り、このトークショーの直前に村田さんが芥川賞を受賞していたから。
それから、「あげくの果てのカノン」の方には重版がかかったということで、このぶんも乾杯。
そのあとは村田さんと米代さんの関係についての話。
そして、「あげくの果てのカノン」の内容紹介。
紹介ムービーが作られていて、それを見て『あれ?男性漫画なのに結構可愛い絵面だな?てゆか、女性漫画家さんだよな?』などと思ったりする私。
その後に編集さんが『あげくの果てのカノンは不倫SFです』と言い、俄然、興味が出てきて前のめり気味になりました。
不倫 meets SFってすごくない?どんな混ぜ合わせ方してるんだよ!? と思って。
…とはいえ、米代さん的には『不倫』も『SF』も編集さんから提案があったから描いただけで、別に得意分野なわけでもない、と。
ちなみに、編集さんからの提案はSFよりも不倫の方が先だった模様。

 

 

『恋愛のはじめの部分では相手に夢を見ている、この作品では、その状態にいる女の子を描きたいと思っている』

トークショー序盤の中心で話題になっていたのは、「あげくの果てのカノン」主人公の『かのん』のキャラクター。
このキャラクター、恋に恋しているというか、恋している相手の『先輩』にものすごく夢と憧れを抱いているんですよ。
このかのんに対して、著者の米代さんは『恋愛のはじめの部分では相手に夢を見ている、この作品では、その状態にいる女の子を描きたいと思っている』という趣旨のことを話していて、なるほどなーと思いました。分かる。
それを受けて、『かのんがしている恋愛は究極の恋愛』と返す村田さん。
村田さんはこのかのんのキャラクターがものすごく好きで、可愛くて仕方がない模様。
かのんは先輩を好きすぎて、先輩の声を録音したものをニヤニヤしながら聞いたりするほどなんですけど、そういう部分について村田さんは『あるあるですよね?』と観客に振り、お客さんが微妙にひく…という一幕もありました。

 

 

「あげくの果てのカノン」は、『ゼリー』と呼ばれるエイリアン?が襲来してくるという設定の世界。
そのゼリーに対して、訓練を受けたSLCという隊員の戦士たちが立ち向かうんですけど、この戦士たちはゼリーからの攻撃で身体に深刻なダメージを受けても平気。『修繕』すれば元通りになって、またゼリーとの戦闘に臨めるのです。
この設定について村田さんは『かのんは奥さんがいるということにこだわっているけど、不倫ということよりも、人間を修繕して戦わせているということに、倫理観を問われている気がする』と話していました。たしかに。

 

 

『ふつうのひとたちの、ふつうの行動がグロテスクで怖い』

司会の編集者さんが『僕は3話が好きなんですよ。それまでは夢を見ているだけだったかのんがアクションを起こすから』と言うのを受けて、村田さんは『私は4話ですね』と返答。
4話はゼリー襲来の最中の話で、これを戦闘員の視点ではなく、避難している一般人の目線から描いています。
既視感あるなー、と思ったんだけど、これエヴァの第参話の鳴らない電話でトウジとケンスケががちゃがちゃやるシーンに似てるのかもしれない…?
てゆか、ゼリーの襲来とかのあたりもエヴァを思わせるっちゃ思わせます。
さて、この4話では『先輩をひたすらに思うかのん』に対して、友達?が男の子を紹介したり、かのんの恋する様子を茶化したりするシーンがあります。
その後、かのんが爆発して地上に出るという展開なんですけど、ここで村田さんは『泣いた』のだそう。
これを聞いて漫画を購入することを決意しました。
で、トークショー後に読んだんですけど、このシーンで村田さんが泣いたのは、ものすごく納得をしました。
このシーンのことを村田さんが『グロテスク』と表現していたのも、すごく理解できました。
ちなみにこの4話、米代さんの経験をベースにしたほぼ実話で、掲載当時はかなり暗かったのだとか。それを単行本化にあたってかなり変えたらしいです。
なお、この話に限らず、単行本化の際に全体的に(100ページくらい)かなり手を加えているそう。
司会を務めた編集者さんは、『アホ毛が増えたり、瞳にキラキラが増えたりして可愛くなった』と仰っていました。

 

 

『ああいうハッピーエンドがあってもいいと思っているんです』

さて、ここまでは「あげくの果てのカノン」の話。
ここからは村田さんの話へと移りました。
芥川賞を受賞した「コンビニ人間」。

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この作品について『間違っているけど私の世界はここなんだ、って言う、最後の覚醒はすごく勇気がいるじゃないですか。そういう選択をしてくれる村田さんはすごい』とコメント。
それに対しての村田さんの言葉が、『あれは主人公にとっては、この上もないハッピーエンド』『ああいうハッピーエンドがあってもいいと思っているんです』
私、この作品は未読なんですよね…。早く積ん読の山から抜きたい…。

 

 

話は引き続き村田さんの作品について。
米代さんは「しろいろの街の、その骨の体温の」がとても好きだという話に。(私もめちゃくちゃ好きです)

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『あれめちゃくちゃつらいじゃないですか。半分読んで、こんなにつらいのにまだ半分!? って思ったんです』『主人公にとって恋愛が救いなんですよね』と話す米代さんに『かのんにとっても恋愛が救い?』と質問する村田さん。
『幻想の先輩がかのんを生かしている、でも先輩は神様じゃない、近づくほどにそれがわかる…そういう歪みを描きたい』そう答える米代さん。
このあたりで『小説家もすごいけど、漫画家もすごいな…。ここまでの感情を描写しようとしてるのか…』とぞくぞく来ました。

 

 

『グロテスクであればあるほど、人間のことがかわいくなる』

このトークショー、米代さんの漫画の出版記念ということで村田さんは意図的に話の中心になるのを米代さんにしようとしていたと思うし、実際、トークショーが始まってから30分くらいは米代さんが多めに話していたんですが、徐々に村田さん&村田さんの作品も話の中心になってきました。
その時に興味深かったのが、『村田さんは人間の何処が面白いと思って書くの?』と振られた時。
それに対しての村田さんの答えは、『嫌な人間を書くのがすごく好き』『醜い感情を書いていると、人間のことが好きになる』『グロテスクであればあるほど、人間のことがかわいくなる』でした。

 

 

村田さんは『嫌いだと思ったひとを好きになるまでずっと考え続けるのがすごく好き』らしく、司会の編集者さんや会場のお客さんからは賛同を得られなかったものの(私も理解できなかった)米代さんは『分かる!』と同意されていました。
村田さん曰く『嫌いなひとを嫌だと感じる時には理由があるけれど、好きなひとや感じがいいひとには理由がない』とのこと。
字面だと納得は出来る気がするけど、実際、この境地(?)にはたどり着けないな…。

 

 

ちなみに、村田さんの『嫌いだと思ったひとを好きになるまでずっと考え続けるのがすごく好き』を理解できた米代さんは、『嫌なひとが描けない。愛しくなってしまう。背景を考えてしまう』という言葉を重ねていました。
だから『本当に嫌なひと』を描けないのだ、と。そこが悩みなのだ、と。
そして、『嫌なひとが理由があって嫌なことをするよりも、普通のひとが悪意なくする行為の方が残酷なことがあるのが怖い』とも言っていて、米代さんから発される生きづらさ(失礼なんですけども…)はこれに起因しているのかなぁ、と思いました。
それを受けて『ふつうのひとが、ふつうにしていることがこわい、という感覚は自分も書きたかった』と言う村田さん。やっぱりこのひとも生きづらそう。

 

 

この辺りで途中休憩が入ったんだったかな…。
そして後半は村田さんのが何かの雑誌?ムック?に寄せた短編の一部を朗読するという豪華なスタート。
その短編に絡んで、司会の編集者さんから『村田さんは身体感覚を、ちょっとドキッとするような言葉で表現するよね』と言われた村田さんが『恋愛を描くにあたって肉体感覚を重視して書いている』と言っていたのが印象深かったです。
だから読み手に刺さる感覚も多いのかな。

 

 

終盤は質疑応答

朗読〜トークが15分くらいあった後、質疑応答コーナー。
長いので、興味あるところだけ拾い読みとかしてください。
とりあえずガッツリ書くね。

 

  • Q:表現することとは?
    • 村田さん
      • 表現というより創作しているという感覚のほうが強い
      • 書いているうちに、『このことばをもっと濃厚にしたい』などが出てくる
      • 物語があって表現があるから、自分にとって表現というのは物語に引きずられているもの
    • 米代さん
      • できたときの快感がすごいもの

 

  • Q:恐怖を感じるものは何?
    • 村田さん
      • 全てが怖い。小さい頃から恐怖にかこまれて生きてきた。世界がぜんぶ怖かった
      • 怖いと感じたものも、書くことで分析できたし、面白がれるようになった
    • 米代さん
      • 視線が怖かった…今もめっちゃこわいんですけど(笑)
      • 集団生活が苦手。いま、漫画をかいているのは、集団生活をしないためにどうするか?を考えた結果

 

  • Q:表現するときに根底にあるものは?
    • 村田さん
      • 知りたい、ということ。こんなときに人間はこんな表情をするのか、みたいなこと。
    • 米代さん
      • 人間を真摯に考えること。

 

  • Q:(米代さんへ)ひろくんの、かのんちゃんに対する感情は…
    • 米代さん
      • (これはネタバレになるかもなので伏せます!!!)(知りたい方はコメントでもメールでもください!)

 

  • Q:嫉妬したりとかする?自分に自信がある?
    • 村田さん
      • 自分に自身がないから嫉妬はしない。この世に生きているすべてのひとが自分より上、と思っている。
    • 米代さん
      • 嫉妬もするし自己評価も低い。嫉妬して『嫉妬するレベルじゃないだろ』と自己嫌悪に陥る。

 

  • Q:(村田さんへ)「殺人出産」や「消滅世界」のような未来から、「コンビニ人間」で現代に設定が戻ったことには理由があるのか?
    • 村田さん
      • 変な設定の世界よりもリアルな世界のほうがグロテスクかもしれないと思ったので、しばらく現代を舞台に書いていくと思う。

 

  • Q:(村田さんや米代さんのように)嫌いなひとを愛しく感じるためには?
    • 村田さん
      • 嫌なひとの何が嫌なのか自分に問いかけ続ける。そうすると原因が自分にあることもある。コンプレックスであったりとかすることもある。それが分かると怒りっていうのがなくなる
    • 米代さん
      • 村田さんとほぼ同じ。嫌なひとの嫌なことを考え続けているうちに、『自分が嫌だな』という個人レベルの話から『みんなそうだ!』という一般の話になる瞬間がある。

 

  • Q:(米代さんへ)米代さんの片思いはどういうふうに終わる?
    • 米代さん
      • 振られたりとか(笑)。こんなひとなんだ、とふつうに失望する

 

  • Q:恋愛において、世間で生きづらいと思っていることは?
    • 米代さん
      • 経験数でマウンティングが決まるというところ
    • 村田さん
      • 自分は恋愛はなんでもありだと思っている。例えば、既婚者が外でセックスしてもオーケーにしよう、で合意できたら外でもりもり恋人を作ってもいいと思う。
        そうやって、本人たちの間で解決していることについて他人が干渉するのはグロテスクだと思う
        世界がそうだから、ということで裁くというのはグロテスク

 

  • Q:両思いより片思いのほうがしあわせ?
    • 村田さん
      • お互い幻想を抱き合っている両思いっていうのもあるので…うーん…
    • 米代さん
      • 両思いで関係が続く…となったときは、ぜんぶ許しあっている存在だと思う。それはすごく幸せ
        片思いでも恋をしていることを許されているのなら、周りに最低とか言われても、それは幸せ

 

  • Q:現実に相手がいる恋愛について
    • 村田さん
      • あんまりしたことがない
        好みのタイプは異様に健全なひと。だから自分に振り向いてくれた時点で好みじゃなくなってしまう
    • 米代さん
      • 現実の相手がある恋愛…まず認知してもらうところから始める必要があるので………ごめんなさい、よく分からなくなっちゃった…

 

  • Q:作品の中の見聞きと想像の割合は?また、想像のきっかけは?
    • 村田さん
      • 自分の場合は殺人出産とかなので…ほとんど想像(笑)
        見聞きで書くのはすごく細かいところ、表情とかですね。瞬きの回数がすごく多いとか、そういうのを現実から盗んで書くことはある実は大学のころ、私小説が書きたかったけど一ヶ月くらいで挫折した
    • 米代さん
      • 考えつめると、自分のことじゃなくて手放せることがあって、それを作品に活かしたりもする
      • 米代さん担当編集さん『1話描くのに創作ノートを大学ノート三冊ぶんくらい書いている』『文字が先行するタイプの漫画家』

 

  • Q:ストーリーがどうやってラストに向かっていくのか
    • 村田さん
      • 絵のイメージがあって、それを膨らませていく
        書いていくと、『瞬間』がある。ぜんぶが分かったってなる瞬間がある。これしかないっていうラストが分かる
    • 米代さん
      • (ラストの話ではないけれど、村田さんの書き方の話を受けて)キャラクターと冒頭が浮かんだから描く、というのが基本的

 

 

はい!ここまで!質疑応答ここまで!
一応、ほぼすべての質疑応答の文字を起こしているはず。(ちょこちょこ要約はしているけど)
時間にしたら30分以上を質疑応答に充てていたような気がするので、まぁそりゃ文字数がハンパないことになるよね。
私の編集力&文章力ではトークショーの面白さ、内容の濃さは存分にお伝えできないとは思うんですけども、備忘録も兼ねて書き残してみました!
トークショーは村田さんが『グロテスク』と言う言葉を多用していたこと、米代さんの生きづらそうな不器用さが印象的でした。
(私自身も常に生きづらさを感じていたりする人間なので、上から目線で言うのもアレなんですが)

 

 

ちなみにトークショー終了後には米代さんにサインをいただき、村田さんとも少し言葉をかわすことができました。
B&B、ありがとうございまーす!
また楽しそうなイベントがあったらお邪魔しまーす!!!